まず初めに、ウィーン学団の論理学者、ルドルフ=カルナップが著作「科学の統一の論論理的基礎づけ」で述べている科学観を紹介したいと思います。
カルナップは記述する言葉の用法によってまず学問を二分するべきであると考えます。
一つが言葉の要素部分のみを指示する形式論理学、構文論による学問、
もう一つが言葉とその対象の関係を論じる意味論による学問です。
前者は形式科学と呼ばれ論理学や数学の様な分析的学問、
後者は経験科学と呼ばれありとあらゆる事象・現象を研究する総合的学門です。
ここで注目するべきことは、カルナップがカントの分析的、総合的という用語を用いて
論理学・数学を分析的とみなしている点です。
しかし、当のカントは純粋数学の公理・公準等は分析的な方法から得られるものではなく、全く直観的で総合的なものだとみなしています。何を以ってカルナップが論理学・数学を分析的であると位置付けているのかは今後の課題となると思います。
次にカルナップは現在の科学が非・有機と有機、すなわち物理学と生物学にわかれていることを指摘します。そしてこの学問を上手く統一するためには意味論的な
物理学的言語、生物学的言語(物―言語、生―言語)を導入し、まずは物―言語を
原子的な物―述語に還元可能にし、その次に生―言語を物―言語に還元するべきであると提言します。
そして生―言語が適用可能な狭義の生物学に対し、心理学・社会科学といった
広義の生物学が存在することを指摘します。カルナップ自身は広義の生物学を
生―言語で記述する可能性を説いていますが、しかしこれは肉体・精神とを二分する
形而上学的二元論と深く結びついている為困難でもあるとも指摘しています。
カルナップは全ての学問の物―言語への還元による導出可能性を探っていました。
しかしその一方で形而上学、美学、倫理学の様な唯物論的でない、価値問題が肝要となる学問を彼は一体どの様に見なしていたのでしょうか?
次回はカルナップの美学観・形而上学批判について掲載したいと思います。
(主な参考資料:「カルナップ哲学論集」紀伊國屋書店、2003)
0 件のコメント:
コメントを投稿